[9.23 J1第28節 FC東京 3-2 鳥栖 味スタ]
5試合ぶり勝利をもたらした逆転ゴールは、ルーキーにとって待望のプロ初ゴールだった。0-2から2点を返して2-2で迎えた後半42分、FC東京MF俵積田晃太が試合をひっくり返す。その瞬間を振り返り「正直緊張した。その時の気持ちはあんまり思い出せない。だけど、決めてやるという気持ちはあった」と手応えを語った。
4試合未勝利が続く11位・FC東京は、勝ち点1差で下回る12位・サガン鳥栖と対戦。前半18分に失点を喫すると、同32分にはPK献上から追加点を許し、前半を0-2で折り返した。しかしハーフタイムで息を吹き返すと、後半9分にMFアダイウトンが、14分にMF渡邊凌磨がゴールを決めて2-2。試合を振り出しに戻した。
ベンチスタートの俵積田は後半33分に出場した。2-2と追いついたFC東京にさらなる勢いを与えるべく、左サイドから果敢に攻め立てる。すると後半42分に渡邊がPA右からシュートを放ち、GK朴一圭のセーブでPA左にこぼれると、俵積田が反応した。「そこまでそんな狙っていないです。気持ちでもうぶち込んだという感じ」。それでも冷静に、GK朴と滑り込んだ相手選手2人をかわすように高めのシュートを放ち、ゴールに突き刺す。直後にはゴール裏へ一直線に向かい、サポーターとともに喜びを爆発させた。
今季FC東京U-18からトップ昇格したルーキーながら、アルベル前監督のもとでプレー機会を与えられ、ピーター・クラモフスキー現監督下でも重用された。しかしアシストで貢献はするものの得点は遠い。攻撃的ポジションでドリブルという武器はJ1リーグの選手にも通用するが、ゴールは遠かった。
苦しい時期の乗り越え方は、ルーキーだからこそわからない。そんなときDF森重真人らベテラン勢から声をかけられていたという。ルヴァン杯準々決勝では第1戦、第2戦ともに出番がなかったが、森重の言葉が背中を押した。「森重さんの『苦しいときにこそやる』という言葉が心に響いていた」。悔しさをバネに、先輩の思いに応えてみせた。
プロ初年度でその舞台の厳しさを知る。だが「この世界はそんな甘くないっていうのはもともと知っていた」からこそ、ひとつ上の先輩で活躍を続けるMF松木玖生は意識する存在だ。「高校生のときにその背中を見ていた。それを超そうという気持ちでやっている」。初得点という最初のハードルを越え、近くて遠い先輩に一歩近づいた。「非常に頼もしい存在で超えたい存在」を追いかけながら、無我夢中で成長するつもりだ。
(取材・文 石川祐介)
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