[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.28 インハイ1回戦 近大和歌山高 0-2 作陽学園高 JヴィレッジP7]
作陽学園高(岡山)が4年ぶりのインターハイ出場を果たす原動力となったのが、FW久城壮司(3年=FCフレスカ神戸)とFW大西卓磨(3年=イルソーレ小野FC)の2トップだ。決して速さや強さ、上手さが際立つタイプの2人ではない。「愚直に頑張れる2トップ」と評するのは酒井貴政監督で、とにかく前線でチームのために頑張れる。
上手く行かない場面もあるが、それでもチャレンジを続けるのが2人の良さでもある。「できる、できないは別にしてやろうとする。とにかくやって、理解しようとしているので、ミスしても“次はこうしよう”と工夫する。アクティブラーニングではないけど、チャレンジをたくさんするから、どう伸びていくか楽しみ。彼らには未来がある」。そう指揮官が口にするのも頷ける2人だ。
近大和歌山(和歌山)との一戦で、決して派手さはないが、勝利を引き寄せるプレーを続けたのは大西だった。前日の1回戦、山形明正(山形)戦は自身初の全国大会で緊張もあった。前線にスペースがありながら、ボールが入ると焦ってしまい、簡単にボールロストしていたという。
「昨日は全く良いプレーができなかったので、今日は気持ちを切り替えてプレーしようと思っていた」。そう意気込んだこの日は前日の反省を生かし、前線で落ち着いたプレー。「自分たちがまずは身体を張らなければいけないと、久城と僕はずっと思っている」と続ける通り、ロングボールを意図的に増やした前半半ばまではターゲット役として泥臭くプレーする。途中からはサイドを使う動きを増やし、身体の強さを生かしたためから見せ場を作り始める。
狙いが見事にハマったのは後半の半ばから。後半17分には前線でのためから、MF飯田龍之進(3年=FCフレスカ神戸)のゴールをアシスト。続く20分にも久城からのパスを受けると、「吉田の特徴は足の速さ。相手が少し前のめりになっていたので相手の裏に落とせば吉田は行ってくれるかなと思って、パスを出した」と素早く前方左にスルーパス。フリーで抜け出したFW吉田央(3年=アリバSC)がドリブルからの得点を決めて、近大和歌山を引き離した。「今大会はまだ点が取れていない。FWとしては点が取れないと満足できない」と本人は反省するが、献身的な守備を含め、チームへの貢献は大きい。
「小学校、中学校の頃から前線からガムシャラに行くタイプだった」が、イルソーレ小野に所属した中学時代に作陽学園と対戦。華麗なパス回しに心を奪われ、入学を決意した。自身は決して先輩たちのように足元の技術があるタイプではないのは分かっている。「上手いプレーができる選手が周りにいる。自分は身体を張って上手い選手に繋げようと意識している」と話すように色の違いによってチームが上手く機能すれば良いと考えている。
冒頭の言葉通り、指揮官の彼に対する評価は高い。「大西の良さは献身さと身体の強さ。相手を引きずってでもドリブルができる。この夏はタメを作って、そこから後まで自分で行けるようになればかなり良い選手になれる」とハッパをかけるのも期待しているからだ。
「チームとしての目標は、ベスト8以上。冬に自分たちが注目してもらうためにもインターハイで勝って、作陽学園が復活してきたと全国の皆さんに知ってもらえる戦いにしたい」。そう意気込む大西は次戦以降もチームのために献身的にプレーしつつ、今度は自らのゴールで勝利を引き寄せるつもりだ。
(取材・文 森田将義)
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Source: 大学高校サッカー
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