[8.7 J1第25節 東京V 0-1 広島 味スタ]
87分間にも及ぶ試合中断があったため、後半29分にピッチに立った時点で時刻は午後10時過ぎ。予期せぬ“深夜出場”となった高校3年生のMF中島洋太朗が同33分、自身初のCKキッカーで先制点の起点となり、サンフレッチェ広島に価値ある勝利をもたらした。
東京ヴェルディとのアウェーゲームでは前半20分すぎ、味の素スタジアム周辺で大きな雷鳴が響き渡るようになり、急遽試合の中断が決定。広島の選手たちは不慣れな敵地で小休止を過ごす形となった。
世代別代表の経験豊富な中島も「東南アジアでスコールが降って中断したことはあったけど、ここまで長い中断は初めてだった」という状況。だが、周囲の選手たちの落ち着きを見て、冷静に試合再開に向けた準備を進められていたのだという。
「これだけ中断したのは初めてだったけど、ロッカーの中で先輩たちが良いお手本になる雰囲気でいたので、自分も乱されることなくできたと思う。こういう状況でもパニックにならず、みんな慌てずに落ち着いていた。みんな経験があるので、そういったおかげで自分も試合に入り込めた」
また、もともとアクシデントに対しては「自分はあまりいろんなことを気にしないタイプ」と中島。デーゲームの多い育成年代からナイトゲームの多いトップチームに帯同先が変わる際、適応に苦しむ高校生・大学生も少なくない中、中島自身は「そこで戸惑うようなことはあまりない」と冷静に立ち向かってきた。
そうして迎えた後半29分、0-0の状況で出番が訪れた。託されたポジションは本職のボランチではなく、一列前のシャドー。「まずは0-0の状況で入ったので、この試合に勝ちに行くというところで得点に絡みたかった」。勝利につながるゴールを狙うべく、ピッチに立った。
すると後半33分、まさに自身の右足からゴールが生まれた。MF満田誠との交代でピッチに入っていたため、「マコくんがキッカーしていたのでそのまま蹴れってことで」託されたという右CK。キッカーは「ユースでは蹴っているけどプロでは初めて」の大役だったが、思い切ってニアサイドに蹴った。
ボールは想定よりも低く飛んだが、相手と競り合いながらDF荒木隼人がシュートを放つと、このこぼれ球にDF佐々木翔が反応。鋭いシュートを叩き込み、試合の均衡を破る先制点が生まれた。「ニアは狙っていたけど思ったより低くなった。良いキックではなかったけど、とりあえず入ってよかった」。そんな中島のCKが起点となった。
さらに中島はその後もハイパフォーマンスを継続。ボールを持てば時間を作るプレーで相手のプレッシングをいなすと、守備ではシャドーの位置からの献身的なプレスバックでピンチを阻止し、1-0からの逃げ切りにおいても大きな存在感を放っていた。
「自分が入って早いタイミングで点が取れたので、勝ち切るには守備が大事になるし、やることははっきりしていた。攻撃で落ち着かせるのは自分の得意なところであったし、失うこともあったけど、できた部分もあったと思う。守備は勝っていたこともあって、いつも以上に意識してできたと思う」。約25分間のプレータイムながら貢献度は大きかった。
今季はこれでJ1リーグ戦6試合目の出場。また今月1日の国際親善試合シュツットガルト戦ではプロ初ゴールも決めるなど、ますます存在感を高めようとしている。「たくさん試合に出ることによって慣れてくることもあるし、成長していくところもあるので、試合にたくさん出て成長していきたい」・充実感をにじませながら、成長への意欲を口にする。
チームはこの日の勝利で首位との勝ち点差を7に縮め、優勝戦線をキープ。ここから中島のような若手選手もレギュラー争いに食い込むようになれば、さらに勢いは強まるはずだ。
ミヒャエル・スキッベ監督は「若い選手がたくさんベンチに入ってくるようになってきた」と手応えを示しつつ、「今日プレーした洋太朗もそうだし、今日はプレーしなかった(井上)愛簾もそういう選手。サンフレッチェ自体が育成クラブで、次の世代の選手にも機会を与えていくプランを持っているクラブなので、これからもどんどんやっていこうと思っています」と積極起用を明言した。
(取材・文 竹内達也)
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